2001年11月29日に第1刷が発行された。
星野道夫さんの奥様の直子さんが、「夫によって紡がれようとしていた『物語』を新たな切り口で再現したい」との思いからこのシリーズ5冊が刊行された。星野さんのアラスカでの夢の軌跡がテーマ別に纏められている。
未発表のオーロラの写真に、今までに星野さんが書かれた本の中からの印象的な言葉を取り上げている。
1冊の本の中で読むよりも、文章の断片を切り取ってみると、さらにまた味わい深く感じられるような気がする。
長い冬の夜、ルース氷河で見るオーロラ・・・。
闇の中で星々の飾りの中に浮かぶ天空のショー、炎のようなゆらめき、光のシャワーのように赤い色が流れて行く写真、またある1枚は、カーテンのようにほの明るい黄色みを帯びた光の帯が降りてくる写真、嵐のように天空全体がゆらめいている写真、どの写真も冷気の中でたった一人で見るとしたらどんな気持ちになるのだろうか・・・?
「一瞬、まわりの雪面がオーロラの光を受け、昼間のような明るさになった。美しさを通りこして、恐怖感に襲われた。逃げ出したいような気持ち。それをぐっとこらえて撮影を続ける。もう寒さも感じない。しかし、すでに指がうまく動かず、1本のフィルムを交換するのにひどく時間がかかってしまった。」
星野さんはこう書いた。恐怖感を感じるような空一面のオーロラの光の織りなす模様。何だかひどく厳粛な襟を正したくなるようなこの世のものと思えないような美しさを・・・。いつかアラスカでオーロラを見てみたいものだと思う。
「人間の気持ちとは可笑しいものですね。
どうしようもなく些細な日常に左右される一方で、
風の感触や初夏の気配で、
こんなにも豊かになれるのですから。
人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。
きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。」
些細なことに一喜一憂する毎日、人は何を心のよりどころとして持てばいいのだろうか・・・。誠実に生きたいと思っていたが、誠実に生きようとするほど人を傷つけてしまうような気がする・・・。
2002.9.15